Book review

インパクト投資――社会を良くする資本主義を目指して

社会的な成果を生む投資で、目的と成果を結ぶロジックモデルや評価方法を実践的に扱った本。

全体のサマリー

社会的な成果を生む投資を、学び、行動、説明責任のために測定する方法を扱う。ロジックモデルや評価手法を通じて、目的と成果を結びつける実践を考える。

感想メモ

Cover Image

Amazon.co.jp: インパクト投資 社会を良くする資本主義を目指して (日本経済新聞出版) eBook : ロナルド・コーエン, 斎藤聖美: Kindleストアを読んだ。

インパクト投資入門は、そういう企業の紹介的な本だったけど、こちらの方は実践の仕方についての本だった。インパクト投資 = 計測という印象が強かったけど、まさにその話が多くて、パフォーマンス計測とかそういう話が好きな人は読むと面白いと思う。

なぜ測定するか

なぜ測定するのかという話が良かった。 次の3つの目的に大体集約されるという話。

  • ●学びのための測定(Measure for Learning)
    • 結果を知るため
    • 経験のみに頼らないため
  • ●行動のための測定(Measure for Action)
    • 結果の性質がわかったら、それを改善する行動が取れる
    • 意見を一致させるために
  • ●説明責任のための測定(Measure for Accountability)
    • 外部に対して説明
    • 参加を継続してやるために

また測定対象は

❶測定は実行可能であるべきだ
❷測定は管理可能であるべきだ
❸測定は比較可能であるべきだ

というのもよかった。

これ自体は、パフォーマンス計測とか他の話でも結構利用できる概念。

何かを改善するときに、まずは計測から入るのがよくあることだけど(推測するな、計測せよ)、それを説明する感じになっててよかった。 ウェブサイトのパフォーマンス改善とかは、まさに測定対象をかなり意識するところからスタートしたりすることが多い。 遅いと感覚ではわかっていても、それが測定可能じゃない場合は改善が難しいという感覚がある。

測定とプロセス

測定対象について合意しようとすると、関係者が同じ言葉を別の意味で捉えていることが見えてくる。その違いを明らかにし、共通のビジョンを作るプロセス自体が、測定結果以上に価値を持つことがあるという話だった。

ゴールを明確にする

セオリーオブチェンジの話はちょっと難しくてよくわからなかったけど、分析手法に出てきたロジックモデルの手法は参考になった

基本的なロジックモデルは、インプット、アクティビティ、アウトプット、アウトカム、インパクトの5要素で整理する。投入した資源から活動と直接の結果を経て、対象者の変化と最終的な社会的変化へどうつながるかを見る。

測定手法の分類

測定手法は、4つの基本的な区分に分けられる。専門家の判断、定性的調査、定量化、そして貨幣化だ
●専門家の判断──経験豊富な専門家によるプログラムについての議論や観察。
●定性的調査──社会的インパクトについての体系的かつ徹底的な調査で、現場視察や構造化インタビュー調査、フォーカスグループなどを含む。
●定量化──数値の形でのデータおよび報告。直接測定だけでなく、インタビューへの回答も含む。
●貨幣化──測定されたインパクトの一部またはすべてを貨幣価値に換算する定量的評価

社会的投資収益率(SROI)は、社会的投資が生み出すインパクトを貨幣価値へ換算して評価する手法で、ROIに近い考え方をする。投入した金額に対して、どれだけの社会的価値が生まれたかを見る。

インパクト投資とリターン

投資に対するリターンは、ざっくり4つのカテゴリーに分けられる。アイデンティティのリターン、プロセスのリターン、金銭的リターン、そして社会的インパクトだ。

  • インパクト投資は、一応金銭的なリターンを目的とすることもできるけど、そのリターンは普通の株式などに比べれば時間がかかるし金額も大きくはない傾向はある。
  • それでもなぜ投資するのか?という話

インパクト投資の旅路を進むなかでつい見過ごされがちだが実は重要な要素が、投資の動機を理解するということだ。これこそ、意図に合った成果を確実に得るための第一歩だ。自分は何者なのか? 何を一番大事に思っているのか? 何をもってすれば、自分の投資は成功したと言えるのか? そして何を投資するのか?

  • 金以外のリターンがあるからで、それが見える形 = 測定されたものじゃないと、投資側も何に投資していいのかわからないという話は結構納得した。
  • ロックフェラー回顧録でも、何に投資(寄付)するべきかというのは実際専門家がいて、普通の仕事以上の労力がかかってる感じだった
  • なので、測定にはコストはかかるけど、測定する価値はあるし、実際測定しようと思うと目的とかを結構整理する機会になって面白い。
  • Release Working in Public を読んだ - azu/book-review で書いてたけど、オープンソースもかなり近い文脈を持ってるので、色々と学びがあった